「歌う鳥のキモチ」・著…石塚徹・発行…山と渓谷社

ぶどう畑での作業は単純な作業が延々と続きます。そんな単調な作業の楽しみが、畑やそのまわりの森から聞こえる鳥たちの鳴き声です。毎年一年を通じて鳥たちの鳴き声を聞くうちに、いろんな疑問が生まれてきます。

 

まず最初に思ったのが、「ウグイス」の鳴き方。西側のぶどう畑と東側のぶどう畑それぞれ違う鳴き方をするウグイスがいます。ここに来るまではウグイスは「ホーホケキョ」と鳴くものだと思っていました。でも、ここのウグイスは、東側は「あ~~どっこいしょ」…西側は「あ~っこちゃん お~~ばちゃん」と聞こえます。最初はまだ鳴くのに慣れていないせいかな?と思っていましたが、毎年毎年同じ場所で同じ鳴き声が聞こえます。何で「ホーホケキョ」と鳴かないのかなぁ~。何で違う節で鳴くのかなぁ~…とかとか…

 

今は春ですが、もう少し暖かくなると「ウグイス」の鳴き声に加えて「ホトトギス」が鳴き始めます。大きな声で鳴く鳥。一日中ずーーっと鳴いている鳥。いつも集団でみんなでわしゃわしゃ鳴く鳥。時々しか鳴かない鳥…。それから、同じ種類の鳥でも、鳴き方にいろいろなバリエーションがあります。季節によっても山のざわつき具合は違います。

 

同じ鳥なのに、なんでこんなに鳴き方や鳴く状況が違うのかなぁ~…と思っていたら、素敵な本に出合いました。その姿を捉えるのは難しい鳥たちですが、その鳴き方や季節から、その鳥たちの「キモチ」を想像する手助けになります。今までは、「この鳴き声はこの鳥」…程度しか思わなかった鳴き声も、その時の鳥の「キモチ」を想像するだけで、何倍もの厚みをもって聞こえてきます。

 

ただ、この本の素敵なところは、断定しきれないところはあえて断定しないところ…。そりゃそうですよね。同じ人間でず~っと一緒に住んでいる相方の「キモチ」さえ、全然わかんないですもの…